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高森明勅
2019.8.20 06:00政治

昭和天皇の靖国神社ご親拝

昭和から平成に時代が変わって間もない頃。
私はまだ30歳代前半だった。
東京駅近くの会場で講演をした。
講演終了後、年輩の方からこんな質問が。

「私は先の大戦の際、一兵卒として戦場に出ました。
その時に、私の隣で戦友が頭を撃ち抜かれて戦死した。
だから私は毎年、終戦記念日には靖国神社にお参りしています。
昭和天皇には、亡くなられる前にせめて一度だけでも靖国神社に
お参り戴きたかった。
昭和天皇はどうしてお参りなさらなかったのですか?」と。

これには驚いた。
実際に戦場に赴いた世代の人達でさえ、戦後、昭和天皇が靖国神社に繰り返し
ご親拝された事実を知らない。又は忘れ去っている。
私は以下のように答えた。

「少し勘違いをされているようですが、昭和天皇は靖国神社に
繰り返しご親拝
をされています。
戦前・戦中に20回、戦後にも8回。昭和50年11月を最後に中断されたのは、
同年8月15日の三木武夫首相の参拝が(それ以前にも歴代首相が繰り返し
参拝していた
にも拘らず)急に、憲法の政教分離原則に違反する、として
政治問題化し、それが
天皇陛下のご親拝にまで“飛び火”してしまったからです。
もちろん、そうした憲法解釈は間違っています。
ですが、“国民統合の象徴”としてのお立場に照らして、政治論争が続いている以上、
ご自身のお気持ちとは関わりなく、ご親拝は行えなくなってしまったのです」と。

但し、見落としてはならない事実がある。
それは、ご本人がそうした事情でご親拝が出来なくなってからも、
春秋の大祭での勅使のご差遣(さけん)はそれまで通り続けられたということ。
更に、弟宮の秩父宮・高松宮・三笠宮をはじめ皇族方のご参拝も途絶えることなく、
続けられた。
これは、いわゆる「A級戦犯」(昭和殉難者)合祀後も、何ら変わりはない。
特に後者の事実は、靖国神社に関心を持っている人でも、意外に気付かれない
場合が多いようだ。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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